レコードプレーヤー (Phonograph) は、レコードを再生する音響機器をいう。一般には、レコードを載せて回転させるターンテーブル、レコード表面の音溝の振幅を電気信号に変換するカートリッジと、これを支えるトーンアーム、そしてこの電気信号を外部に出力する機構を一体化したものをさす場合が多い。
レコードプレーヤーから出力される信号は、他のオーディオ機器に比べて微弱であるため、オーディオアンプ(プリアンプ、パワーアンプ)で増幅して、最終的に人間に聞こえる音圧レベルの音声信号としてスピーカーやヘッドフォンなどに出力する。
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レコードプレーヤーには、前述のような微弱な信号だけを出力するだけのもの(いわゆるオーディオコンポの一機器)と、イコライザアンプ(後述)を含むプリアンプを備えカセットデッキなどの出力信号と同等の強さの信号を出力するもの、さらにパワーアンプとスピーカまでを備えて単独でレコードの音楽などを再生できるもの等がある。このような一体型のものを中心に、1960年代あたりまでは電蓄(電気蓄音機の意)と呼ばれることが多かった。
2007年現在はレーザー光をレコード針とするレコードプレーヤーも商品化されている。ただしプレーヤー自体が高価のため日本国外の公共機関が使用している他は、一部のオーディオマニアに愛用されている程度で一般的に使用されてはいない。
現在、日本を含む主要先進国では一般向けに新譜レコードが(一部を除き)殆ど市販されていないため、プレーヤーも主に古いレコードの再生を目的とした一部のオーディオマニア向けの製品か、通信販売などで見られるような極安価な製品、DJ向けにピッチコントロールなどを搭載したほとんど楽器に近い製品などが市販されている。近年ではヒップホップDJのスクラッチプレイのために、音楽の再生という本来の目的よりも完全に楽器として設計された機種なども登場している。
ここでは、主として一般向けの単体レコードプレーヤーについて説明する。
レコードプレーヤーは次のような主要部分からなる。
ターンテーブル
トーンアーム
カートリッジ
筐体
ターンテーブル
レコード盤を水平に載せて一定速度で回転する回転台。一般に使われる回転数は、33と1/3、45、78r.p.m.である。フォノモータとも称した。
モーター(電動機)で駆動するが、レコード盤を一定速度で回転させるためにモーターの回転数を規整しなければならない。初期には電力会社の供給する交流電源の商用電源周波数(50/60Hz)を基準として、同期モーターで一定回転を得ていた。この場合は電源周波数の異なる東日本/西日本を移動する場合に、回転数の変化に応じた調整改造を受ける必要があった。以後、モーターサーボ回路やPLLなどの電子技術によって独自にモーターの回転数を制御できるようになり、回転数の安定とレコード盤に応じた回転数切り替えなどもモーター側で行えるようになった。
回転をターンテーブルに伝えるための方法として次のような方式がある。
アイドラー方式(アイドラードライブ)
モーター軸(プーリー)→ゴム製の円盤(アイドラー:減速機構も兼ねる)→ターンテーブル内周に回転を伝える
この方式の多くは、モーター軸に段状に直径の違う速度切り替え用スリーブを取り付けておき、メカ的にアイドラーの接する位置を切り替えることで減速比を変えて、必要な回転数に対応する。また同期モーター時代は、そのスリーブも交流電源周波数に応じて2種類用意されていて、周波数の違う地域への引っ越し時には交換する必要があった。構造が簡単なため安価な機器で使われていたが、モータの不要な振動音(「ゴロ」あるいは「ランブル」と称した)を拾ってしまうという欠点もあった。しかし高級品は最高の音が聴けるとマニアの憧れの存在になっており現在ヴィンテージとして取引されている、トーレンス・ガラード・EMTが有名。
ベルト方式(ベルトドライブ)
モーター軸(プーリー)→ゴムベルト→ターンテーブルと回転を伝える(減速も兼ねる)
アイドラー方式と同様に段付きプーリーを用いて回転数を切り替え、電源周波数への対応も同じ手法を用いる物が存在したが、後のモーター側で回転数制御を行なう物にはベルト掛け替え機構は無い。
ゴムベルトが中間に入るためモーターの振動をターンテーブルに伝えにくいという特長があり高級ターンテーブルでも利用された。ターンテーブルの慣性モーメントが大きいほど回転むらが減るため重量級の製品がマニアに愛好された。
この方式の欠点としてはゴムベルトが伸びる、硬化するなどの経年劣化により回転むらが起きやすくなる、回転速度が変わるということがある。
直結方式(ダイレクトドライブ)
最終回転数で回転するモーターの軸に直接ターンテーブルを結合する。あるいは、ターンテーブルそのものがモーターの一部になっている方式である。減速機構に起因する機械的振動や劣化は軽減できたが、低速で回転するモーターの回転を滑らかにするため回転子・固定子の極数を増やす、ターンテーブルの質量を増やして慣性による平滑化をはかる、サーボ制御に起因するジッタを低減するなどの工夫を要しコストが高いため、比較的高級なプレーヤーにだけ用いられたが、後年では比較的安価な製品にも用いられるようになった。部品点数が他の機構に比べて少ないのもその一因である。モーターにはACモーターとDCモーターの二種類が使われ、前者はコギング(ジッタ、細かなトルク変動)が少ないことが利点であり、後者は起動トルクが大きいことが利点である。また、DJ用のモデルでは、そのDJプレイの上で強力なトルクとすばやい立ち上がりが必要とされるため、ほとんどの機種がダイレクトドライブを採用している。
トーンアーム
カートリッジをレコード盤に対して適切な位置関係で保持しつつ再生する溝に追従してレコードの外周から内周に動かす機構で、針を溝に対して適切な力(針圧)で接触させる機構も有する。カートリッジ取り付け部と反対側の一端に設けた回転軸を中心にスイングする方式が主流だが、レコードの半径方向に直線状に移動させるリニアトラッキング方式と称する方式もあった。これはサーボ機構でトラッキングおよび針圧の制御を行うなど、メカトロニクス技術によって初めて実現できたものである。なお、トーンアームで溝をトレースしつつ、針は溝の振動を拾うため、溝の内周への動きに相当する周波数をカートリッジで拾ってしまうとアームが溝をトレースできなくなる。従って、カートリッジで再生できる周波数には下限があり、カンチレバーを含めた振動系のコンプライアンス(振動系の「柔らかさ」の指数)とアームのそれを適切に設定する必要がある。
トーンアームには、その形状によって「S字」「J字」「ストレート」等があるが、すべてに共通することは、先端カートリッジ中心軸はトーンアーム中心軸に対して若干内側に曲がっている点である。[1]これはトーンアームの構造上、円弧を描いて移動するカートリッジ中心軸と音溝の相対角度をできるだけ無くす目的のためである。トーンアームとカートリッジをひとまとめにして「ピックアップ」と呼ぶこともあり、安価なプレーヤーでは両者は一体化され交換できない。
回転するターンテーブルにトーンアームに取り付けられたカートリッジを接触させると中心方向へ針先がのに引き寄せられる力が働く性質をインサイドフォースと呼ぶ。インサイドフォースによって針先が音溝のピッチよりも早く内周へに引き寄せられて正しくトレースできない。錘などを用いて外周へ引き戻しインサイドフォースの力を打ち消すことによって正しく音溝を追従させるトーンアームの機構をインサイドフォースキャンセラという。
レコード表面の音溝の振幅を、電気信号に変換する装置である。音溝をトレースする「針先(スタイラスチップ)」と、これを支える「カンチレバー」、カンチレバー後端に置かれる発電コイル、信号出力用の接点(ピン)で構成される。なお、ステレオの場合は、出力ピンが4本(L+/L-/R+/R-)、モノラルの場合は2本(+/-)になる。
スタイラスチップ(針先)は、ダイアモンド、ルビー、サファイアなどの硬度の高い物質で作られており、断面の形状は、円形、楕円形、ラインコンタクト等がある。 特にラインコンタクトは1954年フランスのレコード・メーカーパテ・マルコーニ(Pathé-Marconi:現在のフランスEMI)で考案された「深さ方向に大きい曲率と、小さな実効針先曲率で音溝に接触させて諸特性を改善する。」といった提案思想が、柴田憲男の4チャンネル針で初めて実現化され、チャンネル・セパレーションや周波数特性で大幅な性能向上、およびスタイラスの長寿命化を実現した[2]。
スタイラスチップの寿命については、判定の基準として「曲率の変化、変化比を基準とする。再生歪みを基準とする。磨耗面の幅を基準とする。」方法が考えられるが、針先の形状や使用状況によって磨耗の状況が異なってくることから一概に「寿命は何時間程度」と定義するのは難しい[2]。レコード盤面に接触するため機械的な摩耗や摩擦熱などにより消耗・摩滅する。消耗が進んだ針の使用はレコード盤を傷める原因となるため、一定時間おきでの交換が推奨される。
カンチレバーは、先端にスタイラスチップを装着した細長い棒で、スタイラスチップと反対側に発電機構を備える。スタイラスチップをレコード音溝に押し付ける機能と、音溝の振幅に正確に追従し電気信号に変換する2つの機能を持つ重要な部品である。 カンチレバーの形状には、無垢棒、アングル、パイプ、テーパー形状などがある[2]。 カンチレバーのおもな材料は安価で加工が容易なアルミニュウムやジュラルミンなどの軽合金が用いられるが、高級品には高度な加工技術を必要とするが音響特性に優れたボロンやベリリウムが用いられる。
発電方式によって、MM(Moving Magnet)型とMC(Moving Coil)型に大きく分けられる。
MM型
カートリッジ内部に差し込まれたカンチレバー後端部分に永久磁石を取り付け、その周囲に置かれたコイルに発生した起電力を再生出力とする方式。
MC型
カートリッジ内部に差し込まれたカンチレバー後端部分にコイルを取り付け、その周囲に置かれた永久磁石に発生した起電力を再生出力とする方式。
両者では、構造が簡単なMM型はパワフル、振動部分の質量を小さくできるMC型は繊細で高音質とされる(製品によって傾向は異なる)。しかしMC型は構造上コイルを大きくすることができないため出力電圧が小さく、イコライザアンプ(後述)の前段に低雑音の前段増幅器(ヘッドアンプ)または昇圧トランスを必要とする。また、スタイラスチップが磨耗した場合に、構造上MM型がスタイラスチップとカンチレバーを含めた「レコード針」のみの交換であるのに対し、MC型はカートリッジ全体の交換となるため、交換時の費用はMC型のほうが大きくなる。このように、コスト的にはMMに分があることもあり、一般用の製品は殆どMM型である。
写真のカートリッジは、本体(1)がシェル(3)に取り付けられている。(2)がカンチレバーとレコード針(スタイラスチップ)の部分。シェルは(4)のコネクタ部分でトーンアームに取り付ける。(5)は指掛けである。
そのほか、安価なプレーヤー用には、圧電素子を用いるセラミックカートリッジやクリスタルカートリッジもあり、これらは出力が大きく、素子が容量性の特性をもつことからイコライザアンプを省略することができるため、アンプの製造コストを下げられるという利点がある。また、(スタックスより商品化されていた)スタイラスの振動に伴う静電容量の変化を用いたコンデンサ型や、(audio-technicaの製品に見られる)磁気抵抗の変化を検出するIM(Induced Magnet)型、MI(Moving Iron)型も作られた。 あまり知られていないようだが1960年代末頃に、光電素子を用いた発電方式のカートリッジがトリオやシャープなど各社から発売されていた。
2000年代からレコード針を生産するメーカーが激減し[3]、消耗品である針(を含むカートリッジ)の入手は「ナガオカトレーディング」で生産・販売する少数の製品や、放送局で使われるDENON製MC型カートリッジ「DL103」[4]、など一部数機種[5]を除き困難になっている。マニア向け一部高級品の流通在庫が細々と一部の販売店やインターネットオークションで販売されている状況となり、一時期、普及型のプレーヤーの針は入手が絶望的な状況とさえ言われた。現在、レコード専門店のアーピス・ジャパン[6]が、互換針・針一体カートリッジの製造・販売を行っている。なお、1970年代の一時期に生産されていた4チャンネル針(考案者の柴田憲男の名からシバタ針とよばれる。[2])は非常に入手困難である。 なお1982年並木精密宝石によってマイクロリッジ針という4チャンネル針が開発されたが、カートリッジメーカにおいては一部の高級品にしか採用されていない。
これらのことなどから、かつてレコードを大量に再生していた放送局などでは、レコードを含む過去のアナログ音源のデジタル化の作業が進められている。また、今後も聴くのであれば、デジタル化するか、カセットテープなどにダビングすることもできる。しかしながら音質の劣化は避けられず、多くのレコード愛好家は、高価なアナログ機器にこだわっている。
筐体
ターンテーブルとトーンアームを保持する基盤を中心とする箱。外部からの振動を回避するため、メカニズムをばね等で浮かす方式や、逆に重量のある頑丈な筐体にしっかり固定して振動を押さえ込む方式など各種ある。また筐体底面の足にも防振ゴムやばね機構などを複合したインシュレータと呼ばれる機構など様々な工夫がされる。
付属機構
トーンアームの上げ下げには、レコードの溝を傷つけないようにコツが要るが、その扱いを少しでも容易にするために、モーター制御でアームを自動的にレコード盤の最外周に降ろしたり、再生終了あるいは任意の時点でアームを上げて元の位置に戻す機構(オートリターン)を備えたプレーヤー(オートプレーヤー)も多かった。オーディオマニア用には、余計な機構は好まれないため、アームの上下だけを行うメカニズム(アームリフタ)のみを装備するのが普通であった。
ほとんどのプレーヤーがターンテーブルの回転数を切り替える仕組みを持つが、回転数が電源周波数に影響される機種では、使用する地域によってモーター回転数を補正するための機構を持っていた。さらに、回転数の微調整(ピッチコントロール)が可能な機種もある。モーターに加える電圧や発振周波数を変化させることによるものが一般的だが、一部の機種には機械的に微調整を行うものもあった。
関連機器
イコライザーアンプ
機械的な振動を用いるレコードの場合、自然の音声の周波数分布において、高音域は音圧レベルが低く、記録波形の振幅も小さくなり、ホコリの影響や電気的ノイズに記録音声が埋もれてしまいやすい。一方、低音域の音圧レベルは高く、波形の振幅が過大であると隣接する音溝にも影響し、盤面の溝の送りピッチを大きくする必要が生じて、収録時間が短くなる。そのため、レコードでは原盤のカッティング時に、低音域を減衰させ高音域を強調して記録し、再生時に記録時と逆の周波数特性をもつ補正増幅器、すなわちイコライザアンプを通して再生することで、再生される周波数特性が平坦になるような手法を用いた。イコライジング特性は、当初レコードレーベルごとに統一性のないものが用いられたが、後にRIAAの定めたカーブに統一された。このため、レコード用のイコライザの特性を「RIAAカーブ」と呼ぶ。
前述したセラミックカートリッジやクリスタルカートリッジは、適正な入力インピーダンスで信号を受け取った場合に、ほぼRIAAカーブに近似した出力特性を持つため、高忠実度再生を要求されない安価なレコードプレーヤーでは、イコライザアンプを省略できるため、コストダウンが可能となった。
しかし、後にハイファイステレオでは、イコライザアンプはアンプに内包することが標準となった。この当時の家庭用オーディオアンプには、上位下位の区別無く「PHONO(Phonographの略)」というレコードプレーヤー専用の信号入力端子と、ピックアップのシールド線を接続するアース端子が、単体イコライザアンプ同様に設けられている。
ところが、世がCD全盛の時代になりミニコンポが家庭用ステレオコンポーネントの主流になると、これらのアンプはコストダウンのためにイコライザアンプを省略した。そのため、市販モデルのレコードプレーヤーをそのまま接続できなくなっている。そのため各メーカーはイコライザアンプをプレーヤー側に搭載し、そのON/OFFスイッチを搭載することで解決した。オーディオ製品で一番普及しているのは、あらゆる機能をまとめたラジカセやミニコンポである)。イコライザアンプは安価な製品なら数千円で購入可能で、トランジスタ、真空管などを増幅素子に用いた自作を試みる愛好家も存在する。
レコードプレーヤーの主要メーカー
Technics(ミニコンと接続可能な普及型フルオートタイプの生産はSL-J8を最後に終了。現在は高級型1200シリーズのみ)
Vestax
Numark
Stanton
DENON
SONY
YAMAHA
Pioneer
Audio Comm
以前レコードプレーヤーを製造していたメーカー
ONKYO
Victor